Osaka University of Tourism’s
Web magazine”passport”
「passport(パスポート)」は、観光や外国語、国際ニュースなどをテーマに、
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茶旅で寧波に行く
茶旅(ちゃたび)という言葉を最近よく聞くようになった。私の知る限りでも、日本にも、一年中ほとんど世界中で茶旅をしていらっしゃる方がお一人いるし、今年2月には「茶旅の会」まで設立されている。
茶旅の先となると、おそらくイメージされるのは京都や静岡、そして中国、インド、スリランカなどの茶産地であろう。それらお茶の歴史にとっての大事な産地を訪れ、茶山や茶園の景観を眺めたり、お茶摘み?加工を体験したり、お茶?茶料理?お茶入りのスイーツなどを味わったり、茶農家と交流したり、お茶関係のお土産を購入したりするのが、お茶好きの人にとっての聖なる”茶旅”なのである。
そのようなお茶の聖地巡礼は、一人旅でもいいが、私は団体のほうが好きである。同じ茶旅に参加する茶友(ちゃゆう)の方々のお茶にかかわる物語を聞くのが大きな楽しみであり、思い出にもなるからである。そのため、私は一人で出かけても、途中で知り合いや友人を誘って茶旅をすることが多い。
思えば、今年はすでに京都府和束町、成都の茶館、峨眉山の茶山と茶工場、蒙頂山の茶遺跡と茶工場、雅安の茶文化テーマのホテルと蔵茶の工場、漢源の茶馬古道、杭州の茶芸館、梅家塢をまわり、そして寧波まで行った。
寧波には、いつもの茶旅とは違う目的で訪れた。主要な茶産地ではない、特別な茶の消費スタイルで注目されているのでもない寧波で、5月4日から6日にかけて、茶旅に関する国際研討会(フォーラム)が開催された。それに参加するために訪れたのである。フォーラムでは、中国国際茶文化研究会、中国茶葉流通協会、中国農業科学院茶葉研究所などの14名もの専門家の方々による、中国における茶旅の現状や先進事例、今後の方向性についての発表や講演があった。また参加者には、寺院でのお茶会や寧波茶文化博物院、寧波国際茶業博覧会の見学も用意されていた。
このフォーラムがなければ、私はたぶん茶旅で寧波に行くなどとは思ってもみなかっただろう。だが、これをきっかけに、寧波のお茶研究者たちに出会い、フォーラムや博覧会を通して中国における茶旅について学び、更にいままで知らなかった寧波のお茶の歴史を深く知りたいと思うようになった。
茶山も見ず、茶摘み体験もしなかった今回の寧波行きは、一般に言う茶旅ではないと思われるかもしれない。だが、寧波はまたお茶で行きたくなる場所であり、その意味で今回の旅も私にとっての大切な茶旅であった。